ボカロに対する所見&初音ミクシンフォニーレポ

2023年も今日でおしまい。色々ありましたが充実した一年間ではあったと思います。

さて、2023年という年を音楽的な視点から捉えてみた際、この1年はとにかく「ボカロ音楽を嗜んだ1年間」だったように思います。今回はその話。それと関連して先週末、12月23日に「初音ミクシンフォニー2023」を聴きに神戸まで行った時の話をしようと思います。

 

私は長い間、少なくとも去年の夏までは、初音ミクをはじめとするボーカロイド曲を何となく聞かないまま生きてきました。小中学校の時からネットの海、ニコニコ動画の海に浸かっていたのにも関わらず、ボカロを通ってきていなかったのです。この理由は明確であり、「ボカロ音声の人工的な部分が肌に合わなかった」という点にありました。齢10そこらのみすたー少年は「普通に人が歌っている曲を聴けばいいじゃん」という感性を持っていたわけです。

しかし昨年夏、ボカロ曲をメインで扱っている音ゲー、プロジェクトセカイを始めてから話は一変します。この10年そこらの間で私の音楽観はそれなりに変わっており、「歌声も一つの楽器に過ぎない」という価値観を持つようになっていました。ボーカロイドを「声」として認識するとどうしても違和感が出てくるのですが、「楽器」として認識すると違和感もなくなるわけです。さらにあのゲームは基本的に「人間の声&ボーカロイドの音声による曲」が流れるため、ボカロ嫌いを謳っていた人間にも馴染みやすく、段々ボーカロイドそのものにも慣れていきました。こうしてボカロに対する苦手意識は撤廃されたのでした。

ゲームを通じて楽曲を聴く中で、私は「作曲者の聴認性(造語)の高さ」に目を付けます。「どうもこの曲とあの曲似ているな…と思ったら同じ作者だったわ」ということが多かったのです。これは人それぞれですがボカロPの場合、ある一人の作曲者が作る楽曲は、ある程度の共通点(これはコード進行のやり方だったり楽器の使用法だったり人それぞれです)を見出すことができます。分かりやすい例で行くとYOASOBIの作曲担当、AYASEさんが当てはまるでしょう。彼もまた元々はボカロPなわけですが、彼の楽曲(特にボカロ作者時代~YOASOBIとしての2022年初頭ぐらいまでの作品集)は間奏でピアノを多用していること、終盤に思いっきり転調を仕掛けていること、王道進行(コード進行の一つです)を多用していること、などといった共通点があげられます。

これは非常に面白いことであり、「一つお気に入りの曲を見つけることができれば、その作者の曲を漁れば他にも好きな曲が出てくる」ということにも繋がります。また私の周囲に熱心なボカロマニアが多数いたことで様々な曲、作者を布教されたことにより知見の幅が広がり、年代問わず様々な曲を好きになることができました。2月には人生初の生ライブ(?)として、プロジェクトセカイのライブにも行くことができましたし、本当にこの一年間の音楽のテーマは「ボカロ音楽」であったと言えるでしょう。

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そんな中行ったのがボカロ楽曲を交響楽団の演奏で味わう「初音ミクシンフォニー」。会場は神戸国際会館、出演は大阪交響楽団。豪華ですね。

かねており私は「既存楽曲のオーケストラアレンジ」というものに興味があったため、有識者の先輩から誘われた際は二つ返事で快諾しました。こういうアレンジ物は原曲を知ってから挑んだ方がよいと踏んでいたため事前に演奏されるであろう曲をしっかり予習してから本番に挑みます。

演奏会を楽しむ前にまずは物販から。こういう会場に行った際、私は必ずパンフレットを買うことにしているためそれを手に入れるのも勿論ですが、熱心な後輩に頼まれているものを手に入れる必要がありました。というわけで物販開始30分前に会場にたどり着いたのですが…すでに長蛇の列。流石初音ミクといったところでしょうか。

物販開始後も中々列が進まず、最終的に購入できたのは並び始めて二時間経ったぐらい。これ本当に頼まれていたもの買えるのだろうか…?とめっちゃビビっていましたが在庫的にかなり余裕があったようで必要なものをすべて揃えることができました。よかったよかった。でもマジカルミライ(ボーカロイドのライブ)の物販はこんなもんじゃないんだろうなあ…。

当日の席は紆余曲折の上、一階の右の端になりました。機材開放席ということで一部演出見えないかも…?という注釈がありましたが、まあ聴くのがメインやしええやろぐらいのテンションで臨みました。

しかしこれは大きな誤算になりました。今回のコンサートは「ボカロとオケの融合」というわけですから、オーケストラの演奏とボーカロイドの歌声が一緒に流れることになります。ボカロが生歌唱ということはさすがにありませんから、それはスピーカーから流れることになる、ということは予め察していました。そして一階右端ということはスピーカー真ん前の席。これはやかましいだろうな…と覚悟していました。

するとなんと、オーケストラの演奏がスピーカーから聞こえてくるではありませんか。流石の私もこれにはびっくり。一瞬やらせか?と思いましたがよく見るとステージのあちらこちらに収音マイクが置いてあります。オケの楽器群は基本的に「デカい音を響かせる」ことがありませんから、ボカロ音声に負けないように音をスピーカーからも出力する、という魂胆は理解できます。真ん中や後ろの席の人からしたらそのようなことを考えずに演奏を楽しむことができたのだと思いますが私がいたのはスピーカー真ん前。交響楽団の皆様が演奏してくださっているにも関わらず、音はスピーカーから聞こえているわけです。なんとなく「生演奏」を聴いている気分にはなれないなあ…と若干もやもやしながら鑑賞することになりました。

それでも演奏自体は凄いのひとこと。予習の際に電子音やロック調で聞いていた曲がクラシックになるとこうも化けるのか!!と感動しました。ボカロ音声との兼合いもいい感じにマッチしているし、指揮者の栗田博文氏(こういうサブカル系シンフォニーの指揮者は大体この人のイメージが強いです)はお茶目だし、何より知っている曲が多く演奏されるので聞いてて楽しい!序盤こそ先述のもやもやがありましたがそれもすぐに払底され、休憩挟んだ第二部になると心から演奏を楽しむことができました。

 

今回演奏を聞いた中でもよかった曲は「shake it!!」「抜錨」「私の時間」「白い雪のプリンセスは」。どれも予習段階から「いいなあこの曲」と思っていたのですが、オーケストラ版は圧巻の一言。前二曲はオケ版が各種サブスクで配信されているのでよろしければご視聴ください。

特に「白い雪のプリンセスは」は音ゲーの影響もありここ三か月ドはまりしていた曲であり、さらに曲自体プログラム記載のセトリになかった(所謂アンコール最後のシークレット曲)ため演奏が始まった瞬間の衝撃はすごかったしとても嬉しかったです。もう一度聞きたいなあ…。

 

そしてこういうサブスク系演奏会の醍醐味として存在するのが「銀テープ」。ライブ最後に発射され争奪戦になるあれです。こういう系のライブに行ったことが過去1回しかない私は銀テープなど獲得したことがあるわけもない状態。でも今回は右端とはいえどだいぶ前の席に陣取っていたのでもしかしたらもしかするかも…?と思っていましたが銀テープは真ん中の方に飛んでいきました。残念。…あれなんか膝の上に落ちてきたぞ?なんだいこれは????

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すると隣に座っていたお姉さんがびっくりしながらこっちを向いて言うのです。

「フタじゃないですか!おめでとうございます!!!」

 

フタ!?!?!?!?!?!?

 

そう、私が獲得したのは銀テープ発射砲台のフタ。こんなものが存在するとは露とも知らなかった私は最初はなんのこっちゃわからん状態だったのですが、お姉さんがめちゃくちゃ祝ってくれたことでなんか凄いもの手に入れちゃったんだな…と思いました。気分はすっかりなろう系主人公です。よく考えたら一度に大量に発射される銀テープと違い、蓋は一つの発射口につき一つしかないはず。銀テープよりよっぽどレアなわけです。運がいいですね。

なおコンサート終了後もお姉さんはフタの獲得を再度祝ってくれて、もしよかったらフタの写真撮りたいから貸してほしいと頼まれました。快諾したら嬉しそうにフタの写真撮ってました。面白かったです。

 

というわけで初音ミクシンフォニーレポでした。なんだかんだ言っていますがものすごく満足していますし、来年も勉強してぜひ行きたいと思っています。もちろんプロジェクトセカイのオーケストラであるセカイシンフォニーも行きたいですね。来年から大阪でも開催されるようだし。

 

では今回はここまで。今年も一年お世話になりました。よい新年をお迎えください。