桜の色の話

新年度が始まりはや3週間、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は関西に居を移し、どうにか生き延びています。

 

さて、新年度の風物詩といえばなんといっても「桜」。今年は例年に比べどうも咲き始めが遅かったようで4月1日時点ではまた咲き始め、といった感じであり、そのおかげか小中高の入学式の時期まで桜の見頃が続くということになりました。ここ数年は入学式の頃には桜が散り始めていたことを考えるととても華やかでよかったのではないかと思います。

というわけで今回は桜の話です。

葉桜。持ち合わせがないためフリー素材からとってきています

突然ですが、私は葉桜というものがとても好きです。なんなら満開の桜よりも美しいものだなあ…と毎年4月10日ぐらいが来るのを楽しみにしているぐらいです。

確かに満開の桜は美しいです。離れて見ると木全体が薄桃色に覆われているように見えつつも、いざ近づいてみると花びらはむしろ白く、それを花柱の濃桃が彩ることで総合的に薄桃色に見せてくれます。桜と言えば薄桃色、という固定観念があり、事実そう見えるのですが、実際はそうではないというのがまた面白いところです。

ただ満開の桜はあまりにも整いすぎているように見えてしまうのです。薄桃色一色に咲き誇る桜に、どうしても私は人為的な美しさを感じてしまうのです。古来より桜は日本人に親しまれており、少なくとも江戸時代には桜を栽培し、品種改良しようとする文化がありました。今私たちが鑑賞している(特に都市部に植えられている)桜は、大昔からそこにあったものではなく、文明の発達によりよそから持ち寄られたものであることがほとんどです。私たちにとっての桜は品種改良等により、古来自然に存在していたものとは少なからず色が違うんだろうなあ…と考えています。

逆に葉桜はどうでしょう。時期にもよりますが、花びらと若葉が良い配分で混ざり合っており、色が濁るように見えます。私はそこに、桜が持つ自然本来の美しさを感じています。

さらに、若葉の緑が加わることで、桜の花びら本来の色である白が引き立っているような気がするのです。満開の桜は薄桃色、という印象が強いのですが、葉桜の花びらは白さがより際立って見えるように感じるのです。これは何故なのでしょうか。

 

まず私は花びらは時季の移ろいによって色素を失うのだろうか、という仮説を立ててみました。それを基にネットを軸に色々調べてみると、ウェザーニュースの記事を見つけました。

 

weathernews.jp

 

この記事によると、桜の花弁(=花びら)の色素である「アントシアニン」というものは、暖かくなると赤みを増す性質があるというもの。そしてその赤みは桜が散り始める(≒葉桜になり始める)時期にピークを迎えるということ。つまり桜は満開後、葉桜になるにつれ、その赤み(桃み)を増しているのだ、ということになります。これは私の仮説と全くもって相反するものです。一体どういうことなのか…とさらにネットを漁ったところ、腑に落ちる記事を見つけました。

 

www.qkamura.or.jp

桜がピンク色なのはなぜ?自然現象解明シリーズ3 | ブログ | 休暇村裏磐梯【公式】

 

どうも人間には「記憶色」というものがあるらしいのです。人が特定の対象に対し強い色のイメージを持っていた場合、実際にそうでなくてもその色に見える、ということです。写真技術などではこの認識を活用し、現実の風景に文字通り着色することで、より鮮明かつ綺麗な作品を作るということもあるようです。

先述したように私には「満開の桜は薄桃色一色である」という固定観念がありました。そのため本当は白みも強い桜が薄桃色に見えてしまう、という錯覚現象が起きてしまっていたのです、それが葉桜になると若葉の緑が足され、薄桃色一色ではなくなります。そうなると「薄桃色一色」というイメージがなくなりますから、桜の花びらも本来の色である白で認識されるようになる、ということなんだろうと解釈しています。

 

今まで考えていた桜の色についての観点は記憶色による錯覚からなるものであり、その錯覚は自然の摂理をすら凌駕するものだということがわかりました。こうなると気になってくるのは来年見るの桜です。この記事をかくにあたり色々調べたことで、「桜は薄桃色であるという観念」の危うさに気づきました。つまり来年以降私は「桜は薄桃色オンリーでない」という観念をもとに満開の桜を鑑賞することになります。果たしてその桜は私の目に今までどおり薄桃色に映るのか、それとも今までより白く見えるのか、気になるところです。

 

 

というわけで今回はここまでです。

 

 

 

以下余談

そういえば葉桜って和歌に出てこないですよね。明治以降の俳句にはちょくちょく登場しているのですが、そこでの「葉桜」ってもう花びらが散りきって普通の緑茂る木と化したあとの桜のことを指すんですよね。「花と葉が共存しているときの桜」を表現する語句ってどっかに存在するのだろうか…?